天文学:JWSTが冥王星最大の衛星の表面を調査
Nature Communications
2024年10月2日
冥王星最大の衛星であるカロン(Charon)表面における二酸化炭素(CO2)と過酸化水素(H2O2)の検出を報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST:James Webb Space Telescope)のデータに基づくこの発見は、カロン表面の化学的プロセスと組成に関する新たな洞察をもたらし、太陽系外縁部の氷天体の起源と進化の理解に役立つ可能性がある。
カロンは1978年の発見以来、広範囲にわたって研究されてきたが、以前のスペクトルデータは2.5マイクロメートル以下の波長に限られており、表面組成の理解には不十分であった。結晶氷とアンモニアを含む物質、および有機化合物の存在は以前から指摘されていたが、使用されていたスペクトル範囲では、二酸化炭素や過酸化水素などの他の化合物を検出するには不十分であった。これらの化合物を理解することは、冥王星やその他の矮小惑星が存在するカイパーベルト(Kuiper Belt)の氷天体の起源や、それらの表面への照射や光分解(光の存在下での分子の分解)の影響を研究する上で重要である。
Silvia Protopapaらは、JWSTの近赤外分光計を用いて、1.0–5.2マイクロメートルの波長でカロンを観測した。著者らは、異なる経度で4回の観測を行い、実験室での実験とスペクトルモデリングとあわせて、結晶氷とアンモニアの存在を確認し、さらに二酸化炭素と過酸化水素も特定した。過酸化水素の存在は、カロン表面への照射と光による水氷の積極的な処理を示唆している。一方、二酸化炭素は、形成時から存在する地下の二酸化炭素貯留層が衝突現象により表面に露出したものから発生したと考えられると、著者らは示唆している。
カロンにおける二酸化炭素と過酸化水素の検出は、惑星科学における前進であり、この衛星の表面化学に関する洞察をもたらす。この研究は、太陽系外縁天体の力学、表面組成、そして太陽放射の影響を調査する今後の研究の基礎となる可能性がある。
Protopapa, S., Raut, U., Wong, I. et al. Detection of carbon dioxide and hydrogen peroxide on the stratified surface of Charon with JWST. Nat Commun 15, 8247 (2024). https://doi.org/10.1038/s41467-024-51826-4
doi:10.1038/s41467-024-51826-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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