進化:ホミニンの小さな体の初期の進化
Nature Communications
2024年8月7日
インドネシアのフローレス島、マタ・メンゲ遺跡で新たに見つかった約70万年前のホミニン(hominin;ヒト族)の歯と前腕の化石は、初期のホミニンが、以前考えられていたよりもさらに小柄な体型を持っていたことを示唆する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この発見は、東南アジアのホミニンの小柄な体格の進化に光を当てるものである。
インドネシアのフローレス島には、約6万年前に生息していた身長約1メートルの非常に小さなホミニン(Homo floresiensis)、通称「ホビット」が生息していた。この地域の他の動物も、小さな体のゾウの仲間や巨大なラットの仲間など、異常な体の大きさを示すことが知られていたが、東南アジアのホミニンの動物がどのようにしてこれほど小さく進化したのかについては、まだ多くの議論がある。マタ・メンゲから発見されたこれまでのホミニンの化石には、顎の骨と歯が含まれていたが、頭部の骨から体の大きさを正確に推定することは困難であった。
海部 陽介らは、マタ・メンゲから約70万年前の歯と上腕骨の一部を含む新しい化石を発表した。著者らは、この化石を分析し、上腕骨がこれまで報告された成体個体の中で最も小さい可能性があること、および60万年以上後にこの地域に生息していたホモ・フローレシエンシス(Homo floresiensis)の標本よりも身長が約6センチメートル低かったと推定されることを発見した。著者らは、小柄な体格は、100万年から70万年前に進化した可能性が高いと推定しており、小柄なホミニンはホモ・エレクトス(Homo erectus)から進化したことを示唆している。
Kaifu, Y., Kurniawan, I., Mizushima, S. et al. Early evolution of small body size in Homo floresiensis. Nat Commun 15, 6381 (2024).
doi:10.1038/s41467-024-50649-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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