遺伝学:アフリカ系女性の乳がんリスクに関連する遺伝的バリアントが特定された
Nature Genetics
2024年5月14日
アフリカ系女性の乳がん発症リスクに寄与していると考えられる遺伝的バリアントについて報告する論文が、Nature Geneticsに掲載される。
乳がんは、世界の多くの地域で最も多く診断されるがんであるが、その罹患率と亜型分布は、遺伝的祖先によって異なると考えられている。アフリカ系の女性は、ヨーロッパ系の女性よりも若年で乳がんを発症する傾向が強く、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)という悪性の乳がんを発症する傾向も強い。それにもかかわらず、大部分の乳がん遺伝学的研究はヨーロッパ系の集団に着目していた。
今回、Wei Zhengらは、アフリカ系女性の乳がんのゲノムワイド関連解析を実施した。Zhengらは、アフリカ系女性(85.3%が米国人、14.7%がアフリカ大陸とバルバドスの出身者)の乳がん症例(1万8034例)と対照症例(2万2104例)のデータを用いて、DNA塩基配列の個体差が存在するゲノム上の小領域(座位)に着目した。その結果、アフリカ系女性の乳がんリスクに関連して、ゲノムワイドな有意水準に達する遺伝的バリアントが12座位で特定された。そのうち3座位に存在するバリアントがTNBCのリスクに関連していた。アフリカ系女性の約8%は、これらの座位の合計6つのリスクバリアント全てを保有しており、これらの女性は、TNBCと診断される可能性が、これらのバリアントを全く保有していない女性や1つだけ保有している女性の約4.2倍であることが判明した。
Zhengらは、今回の知見を用いて、アフリカ系女性の集団におけるリスク予測を改善し、より個別化された検出戦略と予防戦略の基盤を提供できるという見解を示している。
doi:10.1038/s41588-024-01736-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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