気候:熱波と極端な海水準上昇の同時発生で海岸線地帯に対する脅威が高まっている
Communications Earth & Environment
2024年4月12日
熱波と海水準の極端な短期的上昇が同じ沿岸域の地点で同時に発生する現象は、1998~2017年に、それ以前の20年間と比較して有意に増加したことを報告する論文が、Communications Earth & Environmentに掲載される。また、今回の研究では、2025~2049年にこれらの事象が発生する確率が、モデル化された高排出シナリオの下では5倍高くなると考えられることも示唆された。
いわゆる「熱波と極端な海水準の同時発生」(CHWESL)とは、熱波と海水準の極端な短期的上昇が同じ期間中に同じ沿岸域の地点で発生することをいう。この事象は、沿岸域の地域社会にとって深刻な脅威となる場合があるが、この事象の特徴や発生に関する研究はこれまでほとんど行われていない。
今回、Shuo WangとMo Zhouは、1979~2017年に世界中で発生したCHWESL事象を調査し、高排出気候シナリオ(IPCCのSSP5-8.5シナリオ)の下で2025~2049年に発生するCHWESL事象を予測した。研究対象は、長期的な夏季に発生するCHWESL事象のみとされ、北半球で5~9月、南半球で11~3月に発生する事象に限定された。
著者らは、1979~2017年に世界の海岸線地帯の約88%でCHWESL事象が起こったことを明らかにした。海岸線地帯の約39%では、1998~2017年に1年間でCHWESL状態だった日数の合計が、1979~1998年と比較して有意に増加したことが記録され、特に熱帯域での増加傾向が顕著だった。また、熱波の強度とCHWESL事象の発生確率との間に有意な関連性が認められ、熱波の強度が1%増加することが、CHWESL事象の発生確率の約2%の増加に関連していた。これらの予測から、著者らは、2025~2049年に世界の沿岸域では年平均38日間にわたってCHWESL状態になる可能性があると示唆している。これは、1989~2013年と比較して31日増加している。
著者らは、CHWESL事象が、特に人間の健康に対する異常高温のリスクのために、沿岸域の地域社会に重大な脅威をもたらす可能性があると結論付けている。著者らは、熱帯域の国々が最も深刻な影響を受ける可能性が高く、これらの国々の多くは低所得国や中所得国であり、そうした影響への対処に苦労する可能性があると指摘している。また、著者らは、これらの極端な事象に対する備えを強化するために、有効なリスク軽減戦略を早急に策定する必要があると主張している。
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シュプリンガー・ネイチャーは、国連の持続可能な開発目標と、学術論文誌や書籍に掲載されている関連情報や証拠の認知度を高めることに尽力しています。このプレスリリースに記載されている研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を、Climate Action)に関係しています。詳細については、こちらを参照してください。(https://press.springernature.com/sdgs/24645444 )
doi:10.1038/s43247-024-01274-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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