メンタルヘルス:AIを活用したチャットボットによりメンタルヘルスサービスの受診を促進する
Nature Medicine
2024年2月6日
メンタルヘルスサービスへのアクセスを増やす助けになるよう設計された、人工知能(AI)を利用した個人向けチャットボットに関する研究が行われた。イングランドで12万9400人を対象に調査研究が行われ、このシステムの使用によって、国民保健サービス(NHS)のトーキングセラピー・サービスを受ける人の人数と多様性が増加し、特にこれまでサービスが届きにくかった人々にとって顕著だったことが示された。
メンタルヘルス疾患は広くまん延しており、一生の間にこうした疾患を経験する人は世界人口のかなりの割合を占める。メンタルヘルス面での支援があれば、症状が和らぎ、生活の質が回復する可能性があるが、現状では、偏見や、もっと一般的にいえば支援を求めることへのためらい、また行政的障壁や構造的障壁が、こういった支援へのアクセスを妨げている。これまでの研究で、公平に取り上げられてこなかった(under-represented)集団において、メンタルヘルスサービスへのアクセスが少ないことが示されている。
Johanna Habichtらは、Limbic Accessと名付けた個人向けのチャットボットを開発した。このチャットボットは個人の情報を収集し、利用者自身がメンタルヘルスサービスにアクセスするよう前向きに誘導する。またこのシステムは、利用者に自身のメンタルヘルスの問題を探らせ、支援の必要性を自覚させるとともに、偏見の軽減をも目指す。このチャットボットはイングランドの14カ所のNHSトーキングセラピー・サービスセンターのポータルサイトで利用できるように設置された。3カ月の研究実施期間内に、これらのセンターへの受診申込み数は15%増加したが、14カ所のセンターに対応する対照群のセンター(チャットボットの設置がない)においては、受診申込み数の増加は6%だった。受診申込み数の増加が非常に大きかったのは、ノンバイナリーな人、アジア/アジア系英国人、アフリカ/アフリカ系英国人で、それぞれ179%、39%、40%増加した。また興味深いことに、受診申込み数の増加によって、待ち時間の増加や診察数の減少がもたらされることがなかった。
これらの知見は、デジタルツールがメンタルヘルス支援サービスへのアクセスしやすさを改善してサービス利用を広げる可能性があり、それは特に、公平に取り上げられてこなかった集団に対して有効であることを示唆している。また同時に、受診の問い合わせに携わる人材を減らせることも示唆している。
doi:10.1038/s41591-023-02766-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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