保全:自由に歩き回るイエネコが野生動物種に壊滅的な被害をもたらしている
Nature Communications
2023年12月13日
全世界で自由に歩き回るイエネコの餌食になった動物(鳥類、哺乳類、昆虫類、爬虫類など)は2000種を超えており、そのうち約350種に保全上の懸念があることを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、自由に歩き回るイエネコが生態系に及ぼしている影響についての理解を深め、管理上の解決策の構築に役立つ可能性がある。
イエネコ(飼い主がいる個体といない個体)は、9000年以上前に家畜化されて以来、世界中に広がり、現在では南極を除く全ての大陸に分布している。イエネコは生態系に非常に大きな影響を及ぼす広食性捕食者であることが知られているが、その食餌の範囲の広さについては、これまで地球全体の規模で定量化されていなかった。
今回、Christopher Lepczykらは、自由に歩き回るイエネコ(屋外に出られるネコで飼い主の有無を問わない)が消費する動物種の科学的記録をデータベース化した。今回の研究で、鳥類981種、爬虫類463種、哺乳類431種、昆虫119種、両生類57種と他の動物分類群の33種を含む2083種の動物が消費されたことを示す記録が発見された。このうちの少なくとも347種に保全上の懸念があり、「深刻な危機」に分類されている種や、現在では野生で絶滅してしまったと考えられている種も含まれていた。例えば、オグロフクロネコ(準絶滅危惧種)、アオウミガメ(絶滅危惧種-危機)、ハワイセグロミズナギドリ(絶滅危惧種-深刻な危機)、スチーフンイワサザイ(絶滅種)などである。
Lepczykらは、自由に歩き回るイエネコが消費する動物種の正確な数はまだ分かっていないと指摘し、今回の研究で示した消費される動物種の総数の推定値は控え目なものであり、さらなる研究が実施されるにつれて増え続けるという見方を示している。ただし、Lepczykらは、消費された全ての種が獲物として殺されたわけではなく、特に大型種の一部については、その遺体をネコが摂取していた可能性があると述べている。
doi:10.1038/s41467-023-42766-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
気候変動:プライベート航空による二酸化炭素排出量の大幅な増加Communications Earth & Environment
-
惑星科学:火星の岩石堆積物は太古の海の名残かもしれないScientific Reports
-
地球科学:インドプレートとユーラシアプレートの収束の加速を説明するNature
-
メンタルヘルス:うつ病は7か国における婚姻状況と関連しているかもしれないNature Human Behaviour
-
進化:これまで知られている最古のオタマジャクシNature
-
がん:腫瘍アトラスががんの進化を明らかにするNature