【遺伝】DNAバーコードで茶製品の成分を突き止める
Scientific Reports
2011年7月22日
DNAバーコードを用いて146種の茶製品の成分を遺伝学的に同定する研究が行われた。今回の研究は、製品ラベルに記載されていない植物や植物部位の含まれるハーブティーが全体の約3分の1に上ることを示唆している。また、DNAバーコードの利用で、消費者向けの成分表示ラベルの記載内容を今より正確なものとし、食品と植物性薬品の安全性を向上できる可能性も明確に示されている。研究の詳細は、Scientific Reportsに掲載される論文で報告される。
最も厳格な定義によれば、茶とは、チャノキ(Camellia sinensis)の葉から作られた浸出液を意味するが、他の植物や植物部位を用いて作られた浸出液も一般に茶と呼ばれている。市販の茶製品のラベルの記載内容が正確なことは、消費者、販売者、規制当局にとって大事だ。なぜならば、外観だけで、それぞれの植物成分の具体的な種類を特定することは難しいからだ。
今回、M Stoeckleたちは、DNAバーコードを用いて146種の茶製品の成分を同定した。これは、生物のDNAに含まれる短い遺伝的マーカーを用いて、測定対象が属する具体的な生物種を突き止めるという方法だ。茶の90%(Camellia sinensisの96%、ハーブティーの84%)には、標準的な植物バーコードであるrbcLとmatKの一方か両方が含まれていることが確認された。また、ハーブティーの35%からは、製品ラベルに記載されていない成分を示すDNAバーコードが1種以上見つかった。これは、収穫や工場生産時に、偶然、異物が混入したことによるのかもしれないし、成分の追加や差し替えがあったためかもしれない。その理由は、味や外観を良くするためかもしれないが、もしかすると経済的理由だったのかもしれない。
doi:10.1038/srep00042
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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