天文学:木星型惑星は予想以上にありふれた存在なのかもしれない
Nature Communications
2023年10月18日
太陽近傍では、巨大な木星型惑星が、これまで考えられていたよりもありふれた存在である可能性があることを示した論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、太陽系以外の惑星系が太陽系に類似している可能性を示唆しており、近くの星を周回する巨大な惑星に関する我々の理解を深める。
太陽型星の周りに巨大な惑星が形成されやすいことは、モデルによる予測で示されているが、これまでの観測で、そうした惑星はそれほど数多く発見されていない。これまでの研究から、木星型惑星(木星と同じような質量と公転軌道を有する惑星)が周回する太陽型星は全体の20%に満たないため、太陽系は「変わり種」の惑星系である可能性が示唆されてきた。これに対して、若い運動星団では、木星型惑星がはるかにありふれた存在である可能性がある。高コントラスト撮像という手法により、地球から比較的近い位置にある若い星団「がか座β星運動星団(BPMG)」で既に4つの巨大な木星型惑星が発見されている。若い運動星団は、太陽系外惑星の直接撮像の有力な標的となっており、星の形成と進化の研究だけでなく、惑星を形成させる星周円盤の進化の研究にとっても重要だ。また、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ガイア」による高精度な天文観測では、別の4つの巨大な木星型惑星の存在が示唆されている。
今回、Raffaele Grattonらは、惑星形成のシナリオを議論する際に広く用いられている星の質量と主星-惑星間距離の分布を用いて、BPMGの30個の星を分析した。その結果、このうち20個は、安定した軌道を保つと考えられることから、星を周回する木星型惑星が存在する可能性があることが分かった。Grattonらは、少なくとも小規模な星形成領域では、木星型惑星がこれまで考えられていた以上にありふれた存在である可能性を指摘している。
doi:10.1038/s41467-023-41665-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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