微生物学:抗生物質をビオチンや脂肪酸の阻害剤と併用すると、抗生物質耐性に対抗できる
Nature Microbiology
2023年5月2日
抗生物質の最後の砦とされるコリスチンをビオチン阻害剤あるいは脂肪酸阻害剤と同時に投与すると、耐性菌に対するコリスチンの有効性を回復させるのに役立つという細胞を利用した研究の報告がNature Microbiologyに掲載される。マウスでの実験で、この方法がコリスチン耐性菌感染を効果的に治療できることが分かった。
最後の砦となる抗生物質とは、他の治療法で細菌感染が治療できないときに利用される。この抗生物質治療の切り札コリスチンに対しても耐性が増加し、公衆衛生上の懸念となっているが、多剤耐性菌に対して有効な新しい最後の砦となる抗生物質を見つけるのは難題である。この問題は特に、グラム陰性細菌に関して懸念されている。大半の抗生物質に耐性を示すグラム陰性菌が増えている上、グラム陰性菌には不透過性の外膜があり、それが抗生物質にとっての障壁となるからである。
Eric Brownらは、コリスチンをビオチン(ビタミンBの一種)や脂肪酸の生産を阻害する薬剤と組み合わせると、コリスチンの治療効果に対して耐性菌が再び感受性になることを、細胞培養実験で発見した。治療では、この併用剤によって、細菌膜の構成単位として重要な細菌の脂質成分量が大きく減少する。著者らは、脂肪酸阻害剤とコリスチンを組み合わせた治療が、マウスのクレブシエラ肺炎とコリスチン耐性大腸菌感染に有効であることを示した。
著者らは、これらの知見が抗生物質耐性に大きな意味を持つ可能性があると述べている。しかし、コリスチンとの組み合わせを検証した薬剤は少数であり、有効な可能性のある他の薬剤の併用を評価するにはさらに研究が必要だとも述べている。
doi:10.1038/s41564-023-01369-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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