微生物学:腸内細菌相が神経性食思不振症の発症に寄与する可能性がある
Nature Microbiology
2023年4月18日
神経性食思不振症患者の生理的変化、行動変化に腸内細菌やその代謝産物が関連している可能性があり、そのような関連の一部がマウスモデルが実証された。このことを報告する論文が、Nature Microbiologyに掲載される。
腸内細菌相は食物からエネルギーを抽出し、生理活性を持つ代謝産物を生産するが、これらの物質は、脳の機能、行動、食欲の調節を含め、さまざまな生理過程に影響を及ぼす。これまでの研究で、神経性食思不振症患者は、健康な体重の人とは異なった腸内細菌相を持つことが明らかになっている。マウスで行われた研究では、腸内細菌相の変化が食物摂取量の減少に結び付くことが分かっている。
Oluf Pedersenたちは今回、デンマーク人コホートから神経性食思不振症の女性77人と健康な体重と考えられる女性70人を選び、腸内細菌相を詳しく調べた。すると、神経性食思不振症患者の腸内細菌相は対照群に比べて、脳の機能と気分に影響する化学伝達物質を分解する能力が高く、満腹感を誘発することが知られている代謝産物の血中濃度も高いことが分かった。さらに、神経性食思不振症患者では腸内ウイルスの構成が変化しており、腸内ウイルスと腸内細菌の相互作用が乱れていた。腸内細菌相を持たないマウスに神経性食思不振症患者の便試料を移植し、さらに、ヒトの神経性食思不振症の症例に典型的に見られる食物摂取量の減少を模倣するために、カロリー制限した食餌を与えた。すると、この腸内細菌相によって体重増加量が低下し、食欲の制御やエネルギー消費に関連する遺伝子の発現が変化することが分かった。
これらの知見から示唆される結論として著者たちは、腸内細菌相が神経性食思不振症の発症にある程度寄与している可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41564-023-01355-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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