熱帯丘陵斜面の都市化によって地すべりの危険度が高まる可能性
Nature Geoscience
2022年12月6日
コンゴ民主共和国で急速に成長している大都市ブカヴの地下で、地すべりの発生が近年加速していることを報告する論文が、Nature Geoscienceに掲載される。この知見は、無計画な宅地の拡張が土地の表面と地下水流を変化させたことが原因の可能性があることを示唆している。
地すべりは熱帯では一般的であり、都市は地すべりを起こしやすい丘陵斜面の上に拡大しているので、人間の健康とインフラに及ぼす災害は増大している。地表から数十メートル地下で起きる深部における地すべりは、長い年月にわたって広範囲に徐々に変化をもたらし得る。深部の地すべりの振る舞いは丘陵斜面の土壌内の水圧と密接に関連しているが、都市化が水文学的な釣り合いに影響を及ぼし、地すべりの危険度を増大させているどうかかはよく分かっていなかった。
Antoine Dilleたちは今回、2015〜2019年の人工衛星レーダーデータを70年間の航空写真と共に解析し、都市化がコンゴ民主共和国のブカヴの深部で起きる地すべりの動きに及ぼす変化を調べた。彼らは、地すべりの起こっている一部の領域は1970年代よりも最大3倍速く動いていることを見いだし、これは降水量変化や地震の結果ではないことを示唆している。彼らは、最も速く動いている領域(現在、平均毎年0.7メートル移動)は、最も急速に都市化が進んだ地域であることを示している。地すべりの不安定化は、地表の流出経路の変更と水が漏れ出しやすい地下のインフラが組み合わさって土壌水の飽和度が上昇した地域で、最も深刻であることが分かった。
著者たちは、ブカヴや熱帯の成長している他の多くの都市において地すべりの危険度を軽減するためには、地下水浸透についての効率的かつ地域に密着した管理と、人間活動が地表の過程にどのような影響を及ぼすかを理解することが重要だと結論している。
doi:10.1038/s41561-022-01073-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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