環境:ロサンゼルスにおいて予測されるより高くかつ不均衡な洪水リスク
Nature Sustainability
2022年11月1日
Nature Sustainabilityに掲載されたモデル化研究によると、米国カリフォルニア州のロサンゼルスでは、最大で87万4000人の人々が洪水のリスクにさらされている可能性がある。このリスクは、連邦政府の見積もりより高く、都市全体に同じように分布しているのではなく、もともと不利な立場にあるコミュニティーに偏った影響を及ぼす可能性がある。
米国における洪水被害の大半は、湾岸や東海岸に沿ってハリケーンによって生じるが、1861年から1862年のカリフォルニア大洪水から明らかなように、米国西部では極端な降雨も大洪水の原因になり得る。それにもかかわらず、米連邦緊急事態管理局の現行のロサンゼルス群のマップでは、人口のわずか0.3%(2万3000人を少し上回る)しか100年洪水(任意の年において発生するかもっと大きくなる可能性が1%しかない大きさの洪水)地域に住んでいることになっていない。
今回Brett Sandersたちは、新しい高分解能の洪水氾濫モデルを用いて、モデル予測の上限において、100年洪水地域では最大で87万4000人の人々と最大で1080億ドルの財産が、30センチメートルを超えるレベルの洪水のリスクにさらされている可能性があると予想している。このリスクレベルは、米国の歴史において被害をもたらしたハリケーンの大半と同程度である。著者たちは、この洪水リスクに脅かされている人々の人種的格差と社会経済的格差を明らかにしている。非ヒスパニック系黒人やヒスパニックなどのすでに不利な立場にあるグループは、河川洪水のリスクにさらされている人口の4分の3近くを占め、ダム貯水池や湖に起因する洪水のリスクにさらされている人口の半分以上を占めると予想されている。しかし、沿岸洪水の影響を受けるのは、主に裕福な非ヒスパニック系白人であることも見いだされている。
著者たちは、主な都市の全域でさまざまなモードの洪水(降雨、河川、沿岸)に誰がさらされているかを精密に特定するこの新しい能力に基づいて、洪水に対処する今後の取り組みでは、今や全住民にわたるリスクの分布をコミュニティーから地域のスケールで明確に検討できることを示唆するとともに、公平な変更や地理的な重点の移行などの新たな方法の利益を評価している。
doi:10.1038/s41893-022-00977-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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