食料安全保障:ロシア・ウクライナ紛争が食料と気候に及ぼす影響の評価
Nature Food
2022年9月20日
このほど実施されたモデル化研究で、ロシア・ウクライナ紛争に起因する世界的な食料不足は、小麦とトウモロコシの国際貿易によって部分的にしか緩和することしかできず、これは二酸化炭素排出量の増加につながることが明らかになった。この研究知見を報告する論文が、Nature Food に掲載される。
ウクライナとロシアは、世界の穀倉地帯であり、特に小麦とトウモロコシを含む重要な穀物が大量に生産されている。ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、穀物輸出量が減少したため、世界の農業市場は不安定化している。これが食料価格の高騰を引き起こし、穀物の輸入に依存している地域の食料不安が悪化した。
ロシア・ウクライナ紛争の短期的な影響についてはよく分かっていないが、今回、Jerome Dumortierたちが、小麦とトウモロコシの輸出量減少がもたらす中長期的な影響の可能性をモデル化した。Dumortierたちは、生産量と輸出量の減少レベルを複数設定して分析を行い、輸出制限が継続すると、トウモロコシと小麦の価格が、今後1年間とそれ以上の期間にわたって、それぞれ最大4.6%、7.2%上昇する可能性が高いと予測している。そしてDumortierたちは、他の地域で小麦やトウモロコシを増産すれば、輸出量の減少の一部を補って、価格上昇を抑制できるかもしれないが、増産と引き換えに二酸化炭素排出量の増加がもたらされる可能性があることも示している。
今回の知見は、ロシア・ウクライナ紛争を原因とする貿易と生産の混乱が、現在進行中の世界的な食料安全保障問題(干ばつや肥料価格の高騰など)を悪化させ、気候変動を緩和するための継続的活動を台無しにするという二重の影響を及ぼす可能性を明らかにしている。
doi:10.1038/s43016-022-00600-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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