環境:1986~2020年の両生類と爬虫類の侵入による経済的損失は170億米ドル超
Scientific Reports
2022年7月29日
1986〜2020年に両生類と爬虫類が本来の生息地から他の地域に侵入したために、世界経済に少なくとも170億ドル(約2兆2000億円)の損失が生じたという推定結果を報告する論文がScientific Reports に掲載される。この知見は、現在と将来の両生類と爬虫類の侵入の広がりを抑えるために、もっと効果的な政策を導入する必要があることを明確に示している。
外来種の侵入は、在来種の移動や絶滅、病気の蔓延、作物の収量減少などの被害をもたらすことがある。今回、Ismael Sotoたちは、外来種の侵入による経済的損失の推定値をまとめたInvaCostデータベースのデータを用いて、両生類と爬虫類の侵入による世界経済の損失を調べた。このデータは、査読論文と政府機関、学術機関、非政府組織のウェブページに掲載された文書と生物学的侵入の専門家から入手した文書に基づいている。
Sotoたちは、1986~2020年の爬虫類と両生類の侵入による損失の総額が170億ドルを超えることを明らかにした。そのうち、両生類の侵入による損失が63億ドル、爬虫類の侵入による損失が104億ドル、両生類と爬虫類の両方が関係する侵入による損失が3億ドルだった。両生類による損失の96.3%(60億ドル)はウシガエル(Lithobates catesbeianus)1種だけによるもので、爬虫類による損失の99.3%(103億ドル)はミナミオオガシラ(Boiga irregularis)のみによるものだった。両生類による損失の99.7%(63億ドル)は、侵入種の根絶などの侵入管理に関連していた。爬虫類に起因する損失の96.6%(100億ドル)は、侵入による被害(例えば、作物の収量減少)に関連していた。両生類の侵入については、経済的損失の96.3%(60億ドル)がヨーロッパ諸国で発生したのに対し、爬虫類の侵入による損失の99.6%(104億ドル)はオセアニアと太平洋諸島の国々で発生した。
Sotoたちは、両生類と爬虫類の侵入による経済的損失は、侵入種の国際輸送を抑制し、侵入の早期発見を可能にするための対策に投資することによって削減できるという考えを示しており、これにより、外来種の侵入を長期的に管理する必要性を低下させ、発生する被害規模を縮小できると付言している。
doi:10.1038/s41598-022-15079-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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