科学コミュニティー:科学論文に著者と明記される女性研究者が男性研究者より少ない
Nature
2022年6月23日
女性研究者は、男性と比べて、科学出版物の著者と明記されにくい傾向のあることが米国のデータの分析結果から示唆され、論文の著者表示におけるジェンダーギャップが、ほぼ全ての科学分野とキャリアステージで見られた。科学の分野における表立った貢献には男女間格差が存在することが、これまでの研究論文によって十分に明らかになっているが、今回の研究で得られた知見は、その理由を説明する上で役立つ可能性がある。この研究について報告する論文が、Nature に掲載される。
女性科学者は、男性よりも論文出版や特許取得が少ないという観察結果が公表されており、その理由については、女性の科学的貢献に対する評価が低いからかもしれないという仮説が提起されている。女性の貢献が、どの程度過小評価されているのかを算定することは、実際には存在していない部分の測定が関係しており、難しい作業となる。今回、Julia Laneたちは、研究チーム、出版物、特許に関する広範なデータセットを収集して、この課題に取り組んだ。また、Laneたちは、今回の研究で得られた知見を検証するため、科学者の意識調査も行った。
今回の研究では、米国の9778の研究チームの12万8859人の研究者のデータ(その研究分野とキャリアステージに関する情報を含む)を4年間にわたって評価し、3万9426編のジャーナル掲載論文と7675件の特許について氏名の照合を行った。そして、それぞれのチームに所属する研究者のうち何名が論文の著者になったことがあるのかを調べたところ、各チームで女性研究者の占める割合が半分弱(48.25%)であったにもかかわらず、論文著者になった研究者における女性の割合は34.85%に留まった。同じように女性は、特許に氏名が記載されにくい傾向が見られた。意識調査では、女性研究者が、自分たちの研究が無視され、あるいは正しく評価されていないと考えており、そのために自分たちの科学的貢献が男性よりも認識されにくいと自己報告していることが分かった。
ただし、Laneたちは、いくつかの重要な注意点を指摘している。例えば、調査対象となった研究チーム(複数の研究集約型の大学の研究チーム)のデータが、全ての研究者の経験を反映していないかもしれない点だ。Laneたちは、今回の研究で観察された科学的成果におけるジェンダーギャップの少なくとも一部は、科学的貢献度の差ではなく、論文の著者表示の格差によるものかもしれないと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-022-04966-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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