Research Press Release

物理学:群れの中で個々の鳥が速度を調節する仕組みのモデル化

Nature Communications

2022年5月11日

ムクドリの大群のような群れの中で、個々の鳥が飛行速度を調節する仕組みをモデル化したことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。このモデルは、生物系の集団ダイナミクスに関する理解を深めるかもしれないだけでなく、スワームロボット装置の開発にとって重要な意味を持つ可能性がある。

大きな群れの中で個々の鳥の飛行速度が変化すると、鳥の間で長い距離にわたって相互に影響し合って、ムクドリの大群のような集団誇示になることが、実験的データによって明らかになっている。しかし、群れの中で鳥が飛行速度を調節する仕組みは、よく分かっていない。鳥類の集団ダイナミクスに関するこれまでの研究で、群れの中での速度制御を記述する複数の線形モデルが提案されたが、これらのモデルは、鳥が長い距離にわたって互いに影響し合う仕組みと、異なる群れの間での飛行速度の差に限界があるという生物学的データの観察結果を同時に説明できない。

今回、Antonio Cullaたちは、限界速度制御に基づいた数理モデルを構築した。このモデルは、飛行速度の個体差と群れのサイズの違いを考慮に入れ、10~3000羽の範囲内の規模の群れについて実験的に観察された特徴を再現した。Cullaたちは、自然のムクドリの群れの映像から抽出された個々のムクドリの軌跡を解析し、人工の群れの数値シミュレーションで観察された動態と比較した。その結果、このモデルが、群れ間の速度差に限界が存在する状態との大規模な相関を再現することが明らかになった。これは、観察された実験データに対応していた。

Cullaたちは、今回のモデルが、生物系の集団ダイナミクスと群れの中での調節機構を解明する上で役立つかもしれず、またこの知識を鳥の群れ以外にも適用できる可能性があると主張している。Cullaたちは、群れの中で個体の速度が調節される仕組みを解明できれば、ロボット工学の分野において、人工ユニットの一群で、相関を強化し、速度の大きな変動を減らすという実用的応用に道が開くかもしれないと考えている。

doi:10.1038/s41467-022-29883-4

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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