古生物学:翼竜の羽毛にも色彩パターンがあり得た
Nature
2022年4月21日
翼竜類の一部にはさまざまな色素が沈着した羽毛があり、体温調節とディスプレイ(誇示)の両方に用いられていたことを示唆する論文が、Nature に掲載される。この発見は、羽毛の初期の進化史を明らかにする手掛かりとなる。
翼竜類には、毛状の繊維(ピクノファイバー)でできた綿毛があることが知られているが、これが本物の羽毛かは議論の的になっている。今回、Maria McNamara、Aude Cincottaたちは、白亜紀前期のブラジルに生息していた翼竜類Tupandactylus imperator(約1億1300万年前のものと年代決定された)の頭蓋骨の一部を分析した。頭蓋隆起には、2つのタイプの羽毛が見られ、枝分かれしていない小さな単一フィラメントと、それより大きく、現代の鳥類の羽毛に近い枝分かれ構造のものがあった。
この頭蓋骨には軟組織が良好な状態で保存されていたため、McNamaraたちは、メラノソーム(色素を産生する構造体)を詳細に調べることができた。羽毛と皮膚のいずれにおいても、複数のタイプのメラノソームが確認された。これは、これまで獣脚類恐竜と現生鳥類でのみ知られていた特徴である。このことは、現代の鳥類の場合と同じく、メラノソームが羽毛の色を生み出していたことを示唆している。以上の知見を総合すると、これらの羽毛は飛行に使われていなかった可能性があるが、視覚的コミュニケーションの一形態として使用されており、この能力の基盤となる遺伝的機構は、初期に分岐した三畳紀中期から三畳紀後期(約2億4700万~2億100万年前)の爬虫類にすでに備わっていたことが示唆されている。
doi:10.1038/s41586-022-04622-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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