A型インフルエンザウイルスに対する免疫の集団間格差
Nature Communications
2011年8月10日
A型インフルエンザウイルスに対する免疫は、地域社会間で有意差があり、これを人口動態の差異のみによって説明することはできないという見解が、今回発表される。この知見は、個人レベルや家庭レベルのリスク因子とは別に、地域社会の特徴もインフルエンザ伝播の動態の原因となっている可能性を示唆している。詳細は、今週、Nature Communicationsに掲載される論文で報告される。 インフルエンザ発生率の地域差は、大きい空間スケールで一般的に観察される。こうした格差は、小さい空間スケールで起こるのかどうか、そして、原因は人口動態のちがいなのか、それとも、集団の構造や結合性の微妙なちがいなのかという点は、今のところ解明されていない。
今回、D Cummingsたちは、中国広東省で5つの地域社会を無作為に選び出し、最近広まっている5種類のインフルエンザウイルスの有無を調べるための血液検査を行った。その結果、これらの地域社会間で、A型インフルエンザウイルスに対する検出可能な免疫応答の頻度に有意差が認められたが、このことを人口動態の差異だけでは説明できなかった。
今回の研究は、季節性インフルエンザ感染の集団間格差が、これまでに考えられていたよりずっと小さい空間スケールで見られることを示唆している。ただし、今回の研究は、サンプル規模が小さかったため、今後、さらに多くの地域で研究を行って、免疫パターンの空間的差異の一因となる具体的な要因を突き止める必要があると思われる。
doi:10.1038/ncomms1432
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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