Research Press Release

発生生物学:ヒトの妊娠初期をモデル化するためのプラットフォーム

Nature Communications

2022年3月16日

妊娠初期に起こる多細胞現象をモデル化するマイクロ工学システムについて記述した論文が、Nature Communications に掲載される。このシステムは、母体–胎児界面を再現しており、胚の着床の成功の基盤となる機構の解明に役立つかもしれない。

妊娠が成立するためには、妊娠を維持する母体の子宮の内膜層に胚が結合して着床する必要がある。これまでの研究で、この過程に異常があると、妊娠高血圧腎症などの合併症につながる可能性のあることが示されている。しかし、ヒトでこの点を評価することは、倫理的問題のために難しく、動物モデルや細胞モデルでは、細胞の複雑性の一部を模倣できない。

今回、Dan Dongeun Huh、Monica Mainigiたちは、着床オンチップシステムを設計して、母体–胎児界面を再現した。このシステムは、胎児区画と母体血管区画を細胞外マトリックスの溝で隔てたマイクロ流体プラットフォームと、提供された臨床標本から単離された絨毛外栄養膜細胞(EVT;胎盤が子宮壁に付着する際に関与する胎盤細胞)を組み合わせて構築された。このプラットフォームを用いることで、著者たちは、EVTの移動を観察し、母体血管区画の血管への移動を追跡することができた。また、著者たちは、さまざまな環境パラメーターと母体の間質細胞(結合組織)と免疫細胞の存在がEVTの移動に及ぼす影響を調べることができた。さらに、著者たちは、母体の子宮細胞が発現し、分泌するタンパク質を分析し、母体の組織が胎児細胞を受け入れるために再編成される過程を解析した。

著者たちは、今回の知見は、ヒトの妊娠初期をモデル化する能力を増進させ、ヒトの生殖を探究するためのプラットフォームの開発に道を開く可能性があると示唆している。

doi:10.1038/s41467-022-28663-4

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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