材料:水質汚染物質を除去するナノロボット
Nature Communications
2022年3月2日
水中の汚染物質を除去できる温度感受性の磁性ナノロボットについて報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、水中の化学汚染物質を除去するための持続可能な技術を設計する際の指針になるかもしれない。
重金属イオンと農薬は、水中に存在する汚染物質であり、環境に有害であるため、効率的な除去方法の開発が望まれる。人工ナノモーターや人工マイクロモーターが汚染除去方法として提案されているが、現在の触媒モーターは劣化しやすく、寿命が長くならない。
今回、Martin Pumeraたちは、この課題を克服するために、温度感受性の磁性ナノロボットを開発した。このナノロボットは、汚染物質を「拾い上げ」て廃棄するための小型ハンドのように機能する温度感受性ポリマー[プルロニック型トリブロック共重合体(PTBC)]と、ロボットを磁性体にする酸化鉄ナノ粒子でできている。
Pumeraたちは、このナノロボットが、水中の重金属(ヒ素イオン)とアトラジン(一般的な除草剤)を除去でき、汚染物質の取り込み量/放出量を温度によって調節できることを実証した。水温が5℃では、ナノロボットは水中に散乱しているが、水温が25℃に上がると、ナノロボットは凝集し、汚染物質を捕捉した。次に、Pumeraたちは磁石を使って、このナノロボットを水中から取り出すことができた。凝集したナノロボットを冷却すると、それぞれ分離して汚染物質が放出されたため、その後、ナノロボットを再利用することができた。
doi:10.1038/s41467-022-28406-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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