Research Press Release
デング熱と闘うため、蚊を不妊症に
Nature Biotechnology
2011年10月31日
遺伝子操作した雄の蚊を利用して野生の蚊の増殖を抑制する、初めての開放系野外試験の報告が寄せられている。実験室での知見では、雄のトランスジェニック蚊は雌との交尾に関して効率よく野生型の雄と競合し、蚊の媒介するマラリアやデング熱といった感染症を抑制する方法として有望なことがわかっているが、この野外試験のデータで、それが確認された。
不妊の昆虫を大量に放飼する方法はこれまでに、農業上有害な昆虫の数を、広い範囲で殺虫剤を使用することなく抑制するために行われたことがある。他の害虫は、実験室で放射線照射によって不妊化して自然集団へと放飼することができるが、雄の蚊は放射線照射によって雌をめぐる競争力が低下してしまう。
この問題を克服するため、L Alpheyたちは遺伝子組み換えしたネッタイシマカAedes aegyptiを利用した。この蚊は実験室で餌に混ぜて与えていた物質がないと死んでしまうが、この物質は野外には存在しない。Alpheyたちはグランドケイマン島の10ヘクタールを超える区域に、1か月にわたって雄の蚊2万匹を放飼した。このトランスジェニック蚊の交尾成功率は野生の蚊のほぼ半分あり、昆虫防除法として役に立つものと考えられる。
この小規模な研究は、他の区域で、また別種の蚊で繰り返す必要があるが、今回の結果は、もっと多数を広く放飼することによって蚊の個体数の抑制が実現できる可能性を示唆している。
doi:10.1038/nbt.2019
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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