計算機科学:人工知能を使って数学上の問題を解く
Nature
2021年12月2日
数学者による新しい予想や定理の発見に役立つ機械学習フレームワークを報告する論文が、今週Nature に掲載される。このフレームワークは、DeepMind社によって開発されたもので、純粋数学の異なる分野で2つの新しい予想の発見に助力した。今回の研究は、機械学習を既存のワークフローに組み込んで、数学研究を支援する方法を示している。
純粋数学を実践する上での重要な目標は、数学的対象間のパターンを明らかにし、この関係性を用いて予想を定式化することだ。予想とは、真実らしいと考えられているが、厳密に証明されていない記述をいう。1960年代以降、数学者はコンピューターを使ってパターンの発見や予想の定式化を行ってきたが、人工知能システムは、理論数学研究にはあまり使用されていない。
今回、DeepMind社と数学者が共同で、数学研究を支援するための機械学習フレームワークを構築した。今回開発されたアルゴリズムは、数学的対象間に存在する可能性のあるパターンや関係性を検索し、それらの意味を理解しようと試みる。そこから数学者が引き継ぎ、その観察の結果によって直観を導き、予想候補の定式化に至る。今回、Alex Daviesたちは、この手法を純粋数学の2つの分野に適用することで、位相幾何学(幾何学的形状の性質の研究)の新しい定理と、表現理論(代数系の研究)の新しい予想が発見されたと報告している。Daviesたちは、この機械学習フレームワークが今後の数学と人工知能の分野間のコラボレーションを促進する可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-04086-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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