Research Press Release

惑星科学:湖の氾濫によって形作られた初期火星の河谷

Nature

2021年9月30日

初期の火星で起こった河谷の浸食の約4分の1は、湖の氾濫による洪水が原因だったという考えを示した論文が、Nature に掲載される。この論文に示される知見は、火星の河谷網の形成を理解するための手掛かりとなる基本的知見といえる。

約35~37億年前にほぼ終焉した渓谷網形成時代に、火星の河谷を浸食し、湖を満たした原因は、地表水の活動だったと考えられている。局所スケールでは、湖の氾濫が大型河谷の切り込みに重要であることを記述した論文が発表されている。しかし、より広いスケールでは、この渓谷網が生じた原因が、火星上に分布した水循環を原因とする持続性が高く、緩やかな侵食過程である可能性が非常に高いと考えられることが多い。

今回、Timothy Goudgeたちは、かつて液体の水が古代の河谷を流れていたと考えられる地域で、火星の地形の形状と外形を調べた。lその結果、火星全体で、湖に蓄えられた水の氾濫が、古代の河谷網の形成に重要な役割を果たしていたことが分かった。実際、こうした氾濫型洪水は、初期火星の開析谷の体積の少なくとも24%の急速な侵食の原因であることが判明したが、湖沼氾濫型峡谷自体は、渓谷の総延長のほんの一部(約3%)にすぎなかった。

Goudgeたちは、こうした洪水事象が、量的な貢献という意味で、谷の浸食にとって重要であっただけでなく、その後、より広範囲の火星の地形、特にクレーターのある高地の進化に影響を及ぼしたと結論付けている。従って、火星の河谷の特性を研究する場合や火星の河川と火星の地形上の特徴との相互作用と地球上に存在する地形学的システムを比較する場合には、こうした洪水事象が考慮されるべきである。

doi:10.1038/s41586-021-03860-1

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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