生態学:サンゴ礁の正味の成長が21世紀半ばに止まる可能性がある
Communications Earth & Environment
2021年6月11日
21世紀半ば頃に世界のサンゴ礁生態系の溶解速度が成長速度を上回る可能性のあることを報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。この知見は、世界のサンゴ礁生態系の変化を支配する要因を明らかにしており、サンゴ礁の死滅を防ぐために役立つ可能性がある。
サンゴ礁が生き残れるかどうかは、石灰化(炭酸カルシウムを堆積させて新たなサンゴ礁構造を生成する過程)によって再生し、成長する能力にかかっている。世界中のほとんどのサンゴ礁地域で長期にわたる石灰化速度の持続的低下が観察されているが、成長速度が低下している理由を解明し、サンゴ礁の将来に関する根拠に基づいたロバストな予測を行うには、大量のデータの分析が必要だ。
今回、Kay Davisたちの研究チームは、全世界のサンゴ礁生態系に関して1971~2019年に取得された116のデータセットを分析した。Davisたちは、統計モデルを用いて、サンゴ礁石灰化の傾向と重要な駆動要因(水深、波の作用、水温など)を明らかにした。石灰化速度は1970年代以降、毎年約4%低下しており、石灰化の最も重要な駆動要因が水深とサンゴ被度であることが判明した。Davisたちは、この傾向によって、正味の成長と崩壊のバランスが変化することにつながり、2050年代にはサンゴ礁が正味で溶解し始めると予測している。そして、Davisたちは、石灰化の減少傾向が続いている原因の1つが、海洋温暖化やサンゴの白化現象などの全球の気候変動ストレッサーだと結論付けている。
doi:10.1038/s43247-021-00168-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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