環境科学:冬の寒さを生き延びる「ゾンビ」森林火災
Nature
2021年5月20日
冬の間くすぶり続け、春になって再着火する北半球の森林火災が、夏の温暖化に関連しており、総焼失面積の最大3分の1を占める可能性があることを示唆する論文が、Nature に掲載される。この知見は、火災管理政策に影響を及ぼすと考えられる。
冬の極寒多湿によっても鎮火せずに残る北方林(北半球の森林)の火災は、越冬型のゾンビ火災と呼ばれる。北方林は、高緯度に位置するにもかかわらず、深部に有機質土壌が存在し、気候が温暖化していることで、越冬型火災に有利な条件がそろっている。しかし、北方林における越冬型火災の規模と要因は、まだ解明されていない。
今回、Rebecca Scholten、Sander Veraverbekeたちの研究チームは、現地調査で得られたデータとリモートセンシングデータを用いて、2002~2018年に米国アラスカ州とカナダのノースウエスト準州で発生した越冬型火災を特定するアルゴリズムを開発した。研究対象期間中の総焼失面積の0.8%は越冬型火災によるものだったが、この割合は、年ごとに変動し、38%の年もあった。また、夏が温暖になると、その後、越冬型火災が起こりやすいことも判明した。Scholtenたちは、気温の上昇によって、火災が有機質土壌の奥深くまで広がり、火災が越冬しやすくなると考えている。
Scholtenたちは、北方林での越冬型火災は、他の地域より少ないが、気候変動により気温が上昇するにつれて、発生頻度が高くなる可能性があると指摘している。また、Scholtenたちは、越冬型火災の早期発見と抑制は、火災管理機関のコスト削減に寄与できる可能性があるという考えも示している。
doi:10.1038/s41586-021-03437-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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