生態学:藻類を入れ替えることはサンゴが生き残るための重要な手段かもしれない
Nature Climate Change
2021年5月18日
サンゴ類の一部は、組織内部に生息する藻類を温暖化に対する耐性が高い別の藻類株と入れ替えることができ、このことは、サンゴが中程度の全球的気候変動を生き残る上で役立つかもしれないことが、モデル化研究によって示唆された。このことを報告する論文が、Nature Climate Change に掲載される。この知見は、衰退しつつあるサンゴ群集の管理に重要な意味を持っている。
サンゴの白化は、藻類(サンゴ内部の共生藻類としても知られる)が、温度が高くなり過ぎたサンゴから追い出される過程であり、海洋温暖化の影響としてよく知られている。サンゴの熱耐性の閾値は、共生体の種類の影響を大きく受ける場合があり、共生体自体の遺伝的多様性と適応可能性も高いため、サンゴの適応に共生体が関与している可能性が示唆されている。
今回、Cheryl Loganたちの研究チームは、温暖化と海洋酸性化に対するサンゴの応答をシミュレーションする全球的な生態・進化モデルを開発した。Loganたちは、このモデルを4つの気候シナリオの下で1925のサンゴ礁に適用した。このモデルには、2つの競合するサンゴ種が含まれており、これらのサンゴ種は共生体をシャッフルする(耐性の高いタイプの共生体と取り替える)か、あるいは共生体の進化を通して、将来の海洋温暖化・酸性化の影響に適応できる可能性がある。このモデルによれば、シャッフルすることは進化よりも効果的で、サンゴ礁の劣化に最も大きな影響を与えたのは、海洋酸性化ではなく、海洋温暖化だった。ただし、全球的なパターンは、最終的には温暖化と適応のタイプの相互作用によって決まった。
このモデルでは、サンゴの生態と進化が単純化して表現されているが、このモデルによって、サンゴの適応に関する知見が得られて保全に役立つだけでなく、今後の研究の手段が明確に示された。
doi:10.1038/s41558-021-01037-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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