心理学:人間は、引くことによる改善を好まない
Nature
2021年4月8日
人間が物や考え、状況の改善を求められた時、その要素の一部を引くのではなく、新しい要素を足す傾向があることを報告する論文が、Nature に掲載される。その結果として、新たな要素を加えて問題を解決する方法が採用され、特定の要素を除去する方法は、たとえ優れた代替案であっても検討されない可能性がある。
物や考えの改善(例えば、技術開発や主張の強化)は、斬新な点を加えること、あるいは、既存の要素を減らして物や考えを合理化することで達成される。しかし、人間は、可能性のある全ての選択肢を探索することによる疲労に対処するために、検討する考えの数を絞り込む傾向があり、最適解が得られないことが多い。
今回、Gabrielle Adams、Benjamin Converseたちの研究チームは、1153人が参加した実験で、さまざまな課題(例えば、幾何学パズルを解くこと、レゴで作られた構造物の安定性を高めること、ミニチュアゴルフコースを改良すること)に対する参加者の反応を調べた。その結果、参加者には、新しい要素を足す解決策を好む傾向が見られ、既存の要素を減らす解決策は、たとえ単純でより良いものであっても、日常的に見過ごされることが分かった。
また、フォローアップ実験では、減らす変化の方が人々に認知されにくく、そのために足す変化が標準的な戦略になっていることが示唆された。Adamsたちは、このことが、人々が過密スケジュール、画一的な官僚的形式主義、地球に悪影響を及ぼす事象などの問題の緩和に苦労している理由の1つになっていると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-03380-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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