Research Press Release

環境:海草藻場が海洋プラスチックの除去を促進するかもしれない

Scientific Reports

2021年1月15日

海底の海草藻場が、海洋に流出したプラスチックごみを捕捉・抽出して、海岸まで運び、海中からのプラスチックごみの除去に役立っている可能性があることを明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。

これまでの研究では、海洋に流出したプラスチックの大部分は最終的に海底に到達し、その一部が海岸に押し戻されることが示唆されている。しかし、これがどのようにして起こるのかは明らかになっていない。

海草藻場は沿岸海域の浅瀬に広く分布し、海底を形成する堆積物粒子の捕捉と凝固に関与している。今回、Anna Sanchez-Vidalたちの研究チームは、海洋プラスチックの捕捉と除去に海草がどのように関与するかを評価するため、2018~2019年に、マヨルカ島(スペイン)の4か所の海岸で、海草ごみの中から集められたプラスチックごみの量を測定した。マヨルカ島には広大な海草藻場があり、海岸近くに大量のプラスチックが存在している。測定の結果、バラバラになった海草の葉の試料42点の50%からプラスチックごみが発見され、球状の海草繊維(毬藻)198点の17%にプラスチックごみが絡み付いていた。また、バラバラになった海草の葉と毬藻からは、それぞれ1キログラム当たり613点と1470点のプラスチック品が発見された。

Sanchez-Vidalたちは、このデータと地中海での海草繊維産生量の推定値を用いて、地中海に分布する海草藻場において、毬藻だけで、年間最大8億6700万点のプラスチック製品が捕捉される可能性があると提起しているが、海岸まで運ばれるプラスチック製品の数と海岸に打ち上げられたプラスチック製品がどのように処理されるのかは不明としている。

こうした知見は、海草藻場が海洋プラスチック汚染に対抗するために役立つ可能性のあることを示唆している。これまでの研究から地中海の海草の面積が1960年以降13~50%減少したことが明らかになっているため、Sanchez-Vidalたちは、海草藻場の保全が引き続き優先課題とされるべきだと述べている。

doi:10.1038/s41598-020-79370-3

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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