疫学:麻疹の予防接種率の地域差を示す地図
Nature
2020年12月17日
麻疹(はしか)のワクチンの接種率が、2010~2019年に低・中所得国内の地域の半数以上で低下したことを報告する論文が、Nature に掲載される。この接種率低下は、2017年に5歳未満の麻疹患者が1700万人を超え、死者が約8万3400人になったことに寄与した可能性がある。
安全で効果の高い麻疹ワクチンは、1974年以降に全世界で推奨されているが、2017年に小児の麻疹症例数と死亡数の記録が塗り替わった。米国やヨーロッパなどの高所得地域では、最近になって麻疹の集団発生が長期化し始めているが、症例の99%以上は低・中所得国で発生している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した予防接種プログラムの中断という状況下で、地理的に正確な免疫パターン、グローバルワクチンアクションプラン(GVAP)の目標達成の進捗状況、高リスク地域を明らかにする上で、初回の定期麻疹含有ワクチン接種率に関して世界各国の比較ができる局所的年間推定値を算出することは極めて重要である。
今回、Jonathan Mosserたちの研究チームは、2000~2019年の低・中所得国(101か国)における小児用麻疹ワクチンの定期接種率の年間推定値を算出した。そして彼らは、地理的不平等を定量化して、地理的遠隔性という観点から予防接種状況を評価した。その結果、予防接種率は、2000~2010年に広範囲にわたって増加した後、2010~2019年に半数以上の地域で低下し、多くの低・中所得国では「2019年までに全地域で接種率80%を達成する」というGVAPの目標に遠く及ばなかったことが明らかになった。予防接種率は都市部よりも農村部で低かったが、予防接種を受けていない小児の割合は都市部に居住する小児の占める割合の方が大きかった。2000年に麻疹の予防接種率が最も低かった3つの地域は、ハリラス(エチオピア)、ガビラス(エチオピア)、Isa(ナイジェリア)で、2019年に予防接種率が最も低かった3つの地域は、アフガニスタン国内の地域だった。
Mosserたちは、今回の知見は、全世界の子どもに平等な防御をもたらす予防接種プログラムにおいて、政策決定者たちが使用できるツールになると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-020-03043-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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