古生物学:翼竜の起源をたどる
Nature
2020年12月10日
動力飛行を行った最初の脊椎動物である翼竜類に最も近い進化的近縁種は、ラゲルペトンという小型の恐竜に似た動物の分類群である可能性を明らかにした論文が、Nature に掲載される。この知見は、翼竜類の起源、特殊化したボディープランと飛行能力を研究するための新たな枠組みをもたらす。
翼竜類の起源をたどることは難しく、古生物学の未解決問題となっている。翼竜類は、恐竜を含むさまざまな爬虫類の近縁種だとする仮説が提起されているが、翼竜類以外の分類群と翼竜類を排他的に結び付ける納得のいく証拠は得られていない。今回の研究で、Martín Ezcurraたちの研究チームは、恐竜の前駆動物である2本足の爬虫類分類群であるラゲルペトンが翼竜類の姉妹分類群かもしれないと示唆している。
Ezcurraたちは、翼竜類とラゲルペトンの遺骨のマイクロCTスキャンと3D再構成を行って、解剖学的構造の類似点を明らかにした。ラゲルペトンは飛行できなかったが、その独自の特徴の一部(内耳の形状など)が翼竜類と同じであり、これが両者の関係に説得力を持たせている。また、ラゲルペトンには、翼竜類の高度な感覚能力に関連する脳の特徴が見られ、これらの特徴は飛行を行う以前に進化したことを示している。
この証拠は、脊椎動物の進化の中で最も驚くべき新機軸の1つである「空の征服」を実現した翼竜類の独自のボディープランの組み立ての初期段階を明らかにしたものである。陸上脊椎動物が飛行脊椎動物に変化した正確な過程はまだ分かっていないが、今回得られた知見は、最古の翼竜類とそれに最も近い近縁種との間に存在する時間的空白と解剖学的空白を小さくする。
doi:10.1038/s41586-020-3011-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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