代謝応答のバランスを制御する
Nature Cell Biology
2011年8月29日
NF-kBシグナル伝達経路は、細胞がグルコースからどの経路によってエネルギーを産生するのかを振り分けており、それによって細胞の代謝を制御していることが報告された。
正常な細胞でのグルコース分解は解糖と呼ばれる過程によって開始され、その産物が細胞のエネルギー生産工場であるミトコンドリアに送り出される。そしてミトコンドリアでの呼吸作用によってエネルギー生産が完了する。だが、がん細胞では腫瘍増殖のために活発な代謝が必要となるので、それに応じるために解糖とミトコンドリアでの呼吸とを切り離して、細胞の構成材料の生合成量を増やしていることが多い。
G Franzosoたちは、NF-kB経路がミトコンドリアの呼吸の調節により、このような代謝応答のバランスを制御していることを明らかにしている。NF-kBはミトコンドリアの呼吸に必要な酵素の量を増加できることがわかった。これによって細胞は代謝を適応させ、グルコースが不足するような場合でも生存し続けることができる。この仕組みはまた、解糖と呼吸との脱共役によって細胞増殖を促進するという発がん性変化の影響に対する障壁にもなっている可能性がある。だが、ある種の状況下では、NF-kBによるエネルギー産生経路の再プログラム化は、がん細胞が代謝ストレスに対処するのを助けることになるかもしれない。
これらの知見は正常な細胞と腫瘍細胞の代謝調節の一端を明らかにしており、がんの研究にかかわってくると考えられる。
doi:10.1038/ncb2324
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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