Research Press Release

疫学:人間の移動パターンから、SARS-CoV-2の伝播リスクが最も高い場所が予測される

Nature

2020年11月10日

Epidemiology: Human movement patterns predict locations with highest risk of SARS-CoV-2 transmission

レストラン、フィットネスセンター、カフェ、ホテルなどの施設の営業再開は、SARS-CoV-2の伝播リスクが最も高いことが、米国のデータに基づくモデル研究によって明らかになった。このモデルによれば、これらの施設で利用者の密度を低下させれば、予想感染者数を大幅に減らせる可能性があるとされる。また、今回の研究は、SARS-CoV-2の感染リスクには社会経済的状況による格差が存在することを明確に示している。このような研究結果を報告する論文が、Nature に掲載される。

今回、Jure Leskovecたちの研究チームは、人々の移動の変化がSARS-CoV-2の感染拡大をどのように変化させるかを評価するため、米国の携帯電話データ(2020年3月1日から5月2日までに収集されたもの)を用いて、数百万人の人々がそれぞれの近所からどのように移動したのかを示すマップを作成した。Leskovecたちは、このデータと1つのSARS-CoV-2伝播モデルを組み合わせて、感染リスクが高いと考えられる施設と感染リスクのある集団を特定した。このモデルによるシミュレーションでは、米国の10大都市圏(シカゴ、ニューヨーク市、サンフランシスコなど)の1日の確認症例数が正確に予測された。

この移動データは、詳細度が高いため、Leskovecたちは、人々が定期的に訪れる傾向のある、20のカテゴリーに分類される「関心地点」(POI)と呼ばれる施設(約55万3000カ所)における新規感染者数の推移を、1時間単位で示すモデルを作成することができた。Leskovecたちのモデルから、感染症例の大多数は、少数の施設(例えば、フルサービスのレストラン)で発生することが予測された。例えば、シカゴ都市圏では、関心地点での予想感染症例数の85%が関心地点全体の10%に集中していた。また、このモデルでは、低所得者群と高所得者群の比較で、低所得者群の方がSARS-CoV-2に感染する確率が高いことが予測され、その理由として、低所得者が高所得者ほど大幅に移動性を低下させられなかったことと低所得者が出入りする関心地点の方が狭く、混雑していたことが示され、それが感染リスクを高めたことが明らかになった。例えば、低所得者が利用した食料品店は、高所得者が利用した食料品店よりも平方フィートあたりの利用者密度が59%高く、平均滞在時間も17%長かった。

Leskovecたちは、誰がどの場所でSARS-CoV-2に感染する確率が高いのかを示すモデルを作成することによって、さまざまな施設の営業再開戦略の効果を推定できたことから、このモデルが施設の営業再開方針に有益な情報を提供できるという考えを示している。例えば、施設の利用客を最大収容人数の20%に制限すると、新規感染者数は80%以上減少するが、施設を利用する回数の総計は42%しか減少しないと予測されている。

doi:10.1038/s41586-020-2923-3

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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