生物工学:DNA塩基配列を用いた「ヤマアラシ」システムで対象物を標識する
Nature Communications
2020年11月4日
DNA塩基配列で対象物を「標識」するシステムについて報告する論文が、Nature Communications に掲載される。「Porcupine(ヤマアラシ)」と命名されたこのシステムは、ヤマアラシの針状の毛が物にくっつくことから着想したもので、対象物の追跡に用いることができ、RFIDタグやQRコードが適さないような非常に小さな物体の追跡にも使用できる。この標識は、携帯デバイスを使用して数秒以内に解読できる。
今回、Katie Doroschakたちの研究チームは、DNA塩基配列をIDとして用いる分子標識システムPorcupineを設計した。このDNA標識は、あらかじめ定義された塩基配列(著者たちがmolbitsと命名)からなり、これを組み合わせて一意的な「バーコード」を作ることができる。それぞれのDNA塩基配列は、携帯型ナノポアDNAシーケンサーを使って直接解読できるよう設計されており、低リソース環境でもオンデマンドで読み出すことができる。Porcupineは、基本的な実験装置を用いて大量の一意的なタグ(約42億個)を生成できるように設計されている。Doroschakたちが行った原理実証実験では、このシステムを用いて、Molecular Information Systems Labの頭字語MISLを数秒以内に確実に符号化・復号化できた。
Doroschakたちは、今回のシステムは、RFIDタグやQRコードのような既存の標識方法を使用できない状況、例えば、非常に小さな対象物や大量の対象物(もしくはその両方)を標識する場合使用されることを想定している。その他の用途としては、標識が見えない状態にしておく必要のある偽造防止などがある。
doi:10.1038/s41467-020-19151-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
環境:アマゾン先住民の領域が人間の健康に恩恵をもたらすCommunications Earth & Environment
-
動物学:タコはあらゆる作業に最適な腕を前面に出すScientific Reports
-
気候変動:主要な炭素排出源が熱波の強度と発生確率に影響を及ぼしているNature
-
惑星科学:地球近傍小惑星リュウグウの母天体には長い流体の歴史が存在するNature
-
古生物学:トカゲのような生物の起源をさらに遡るNature
-
惑星科学:火星の泥岩に残る特徴が古代の環境条件を解明する手がかりとなるNature