古生物学:翼竜類の飛行
Nature
2020年10月29日
空飛ぶ爬虫類である翼竜類は、1億5000万年にわたる進化の過程で、より効率よく飛行できるようになったことを明らかにした論文が、Nature に掲載される。今回の研究は、陸上に生息していた翼竜類の祖先がどのようにして空を飛ぶようになり、さらに進化したのかを解明する上で役立ち、今回用いられた研究方法は、機能性とエネルギーの微妙な変化を地質時代を通して調べるための青写真になると考えられる。
翼竜類は恐竜に近い近縁種で、三畳紀(約2億4500万年前)に出現し、白亜紀の終わり(約6500万年前)に非鳥類型恐竜と共に絶滅したが、最古の翼竜類の化石についての研究は進んでいない。そのため、翼竜類がどのようにして飛行するようになったのかを調べることが難しくなっている。今回、Chris Vendittiたちの研究チームは、新しい統計的手法、生物物理学的モデル、化石記録から得られた知見を用いて、翼竜類の出現から絶滅までの間、その飛行効率は、自然選択の作用によって一貫して向上していたことを明らかにした。翼竜類は、当初は短距離しか飛べない非効率的な飛行をしていたが、その後、長時間にわたって長距離を飛ぶことができる能力を身につけた。
しかし、この進化パターンには例外がある。白亜紀に生息していたアズダルコ科の巨大な翼竜(QuetzlcoatlusとTapejaraを含む)については、陸生動物の生活様式に近かったことを示唆するさまざまな適応が見られるため、その飛行能力は、論争の的になることが多い。今回の研究でVendittiたちは、アズダルコ科の翼竜は飛行できたが、その飛行能力は時間がたっても向上しなかったことを明らかにした。このことは、アズダルコ科の翼竜にとって飛行効率が他の翼竜類ほど重要ではなかったことを示唆している。
doi:10.1038/s41586-020-2858-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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