ウイルス学:季節性コロナウイルスに対する防御免疫は短期間しか持続しない可能性がある
Nature Medicine
2020年9月14日
SARS-CoV-2に対する防御免疫が長くは持続しない可能性が、SARS-CoV-2に似た4種類のコロナウイルスに対する免疫について調べた研究で示唆された。今回、10人の健康な被験者を35年以上にわたって観察した症例研究の血清検体を使用して、同一の季節性コロナウイルスへの再感染が、最初の感染からほぼ1年後に頻繁に起こっていることを明らかにした研究がNature Medicine に掲載された。この結果からすると、ワクチン接種や自然感染による集団免疫の獲得を待つといった、長期間持続する免疫を必要とする対策を取る場合には、注意が必要となりそうだ。
SARS-CoV-2への曝露後の再感染の証拠は限られているが、一般に、コロナウイルスへの再感染は実際に起こっていると考えられている。将来起こるSARS-CoV-2感染の波に備えるためには、再感染を防ぐ免疫の持続期間を知ることが不可欠である。
L van der Hoekたちはまず、気道感染を引き起こす4種類のヒト季節性コロナウイルス(HCoV-NL63、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-HKU1)について調べ、これらのコロナウイルスに共通する性質は、SARS-CoV-2を含めたヒトコロナウイルス全てで見られると想定した。
次いで、季節性コロナウイルス感染がどのくらいの頻度で起こるかを知るために、アムステルダムの健康な男性10人から1980年代以降定期的に採取された513個の血清検体が調べられた。著者たちは、個々の季節性コロナウイルスのヌクレオカプシドタンパク質(コロナウイルスが豊富に持つタンパク質の1つ)に対する抗体の上昇を測定し、抗体上昇が新たな感染と見なされた。そして、患者1人当たり、3~17回のコロナウイルス感染が認められ、再感染までの期間は6~105か月だった。再感染が最も頻繁に観察されたのは、初回感染から12か月後だった。
また、4種類の季節性コロナウイルス全てについて、オランダで6月、7月、8月、9月に採取された血液検体の感染率が最も低いことが分かった。このことは、温帯地域では冬に感染が多発することを示しており、著者たちは、パンデミック後にはSARS-CoV-2も同じパターンを示すだろうと考えている。
もっと規模の大きなコホートでさらに研究する必要はあるが、4種類の季節性コロナウイルスの全てで再感染は頻繁に起こっていると著者たちは結論している。このことは、再感染がSARS-CoV-2を含めたヒトコロナウイルス全てに共通する特徴である可能性を示唆している。
doi:10.1038/s41591-020-1083-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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