Research Press Release

バイオテクノロジー:超音波がマウスの脳卒中後の脳内残留物を除去するのに役立つ

Nature Biotechnology

2025年11月11日

低強度の超音波治療は、出血性脳卒中に似た出血を誘発したマウスの脳から神経毒性のある残骸を除去することを報告する論文が、Nature Biotechnology にオープンアクセスで掲載される。著者らは、ヒトでの臨床試験で同様の良好な結果が得られれば、この手法は手術や薬物を用いずに、出血性脳卒中―そして潜在的にはアルツハイマー病やそのほかの外傷性脳損傷―を安全かつ簡便に治療する手段となり得ると示唆している。

血液細胞などの老廃物が脳内に蓄積すると、炎症を引き起こし、神経細胞を損傷する。老廃物除去機能の障害は、脳卒中、頭部外傷、および認知症などの疾患と関連している。出血性脳卒中に対する外科的治療は予後を改善するが、侵襲性が高く専門施設への迅速な搬送が必要である。薬物療法も研究されているが、現時点で承認されたものはない。

Raag Airanら(スタンフォード大学〔米国〕)は、脳内デブリ除去を促進する超音波療法を設計し、出血性脳卒中(くも膜下出血と脳内出血)の2つのマウスモデルで試験した。超音波治療は、脳内の赤血球の半分以上を除去し、それらを老廃物除去を助ける深頸部リンパ節へ運搬する様子も観察された。両脳卒中のモデルにおいて、超音波治療を受けたマウスは未治療群より脳の炎症および神経細胞損傷が少なかった。脳内モデルでは、生存率、症状、および行動テストで治療群が良好な結果を示した。生存期間が長く、脳浮腫が少なく、体重回復が良好で、そしてコーナー旋回テストと握力テストで高得点を記録した。この治療法は、マウスで脳内デブリ除去効果を示した既存の実験的薬物療法よりも効果的かつ安全であった。

著者らは、超音波プロトコルを現行の安全基準に適合させるよう設計し、現在臨床試験の計画を立てている。試験が成功すれば、非侵襲的な超音波が将来、出血性脳卒中や神経毒性デブリ蓄積を伴うほかの脳疾患において治療効果をもたらすかもしれないと著者らは示唆している。

Azadian, M.M., Kiani Shabestari, S., Rajan, A. et al. Clearance of intracranial debris by ultrasound reduces inflammation and improves outcomes in hemorrhagic stroke models. Nat Biotechnol (2025). https://doi.org/10.1038/s41587-025-02866-8

News & Views: Ultrasound mops up damage from hemorrhagic stroke
https://www.nature.com/articles/s41587-025-02889-1


 

doi:10.1038/s41587-025-02866-8

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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