生態学:生物学的侵入の世界的コスト
Scientific Data
2020年9月9日
世界中で起こっている生物学的侵入の経済的コストに関するデータセットについて記述した論文が、Scientific Data に掲載される。現在、この更新可能なデータベースには、90か国の343種について、1945~2017年のコスト推定値2419件が登録されている。
「生物学的侵入」とは、ある生物種が本来の生息域から別の地域に移入して、生息域を拡大することをいう。侵入種は、生物多様性の減少と病害の蔓延の一因となり、作物被害、インフラの劣化、医療支出、および生物学的侵入を制御する試みに伴う管理費に起因する多額の経済的損失をもたらす。近い将来、さらに多くの侵入が予想されており、その経済的影響を認識することは、政策立案者にこの問題にもっと注目するよう働きかける上で役立つかもしれない。
Christophe Diagneたちの研究チームは、今回の論文で、侵入種に関連する経済的コストの推定値に関する最新の全球規模の包括的な標準化データの集積・記述であるInvaCostを紹介している。全ての経済的コストの推定値は、20種類の現地通貨で表記された数値から単一通貨のインフレ調整後の数値(2017年の米ドル)に換算されている。また、分類群、地域、影響を受ける部門やコストのタイプによるデータセットの検索ができる。
これらの収集されたデータによって事実がさらに明らかになったことで、Diagneたちは、InvaCostが、侵入種の影響に関して深まりつつある科学的理解に従来の不十分な生物学的侵入の管理策を追いつかせるために役立つことを期待している。
doi:10.1038/s41597-020-00586-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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