Research Press Release
惑星科学:火星の古代の氷床
Nature Geoscience
2020年8月4日
初期の火星にあった谷は、広大な氷床の下で形成された可能性があることを示唆する論文が、今週、Nature Geoscience に掲載される。今回の知見は、初期の火星の地質学的証拠と気候シミュレーションを両立させるのに役立つかもしれない。
火星の歴史で最初の10億年の気候を理解することは、この惑星が居住可能な状態にあったかを判断する上で重要である。これまでの研究から、古代の火星の南部高地にある谷のネットワークは、河川によって浸食されており、これらが形成されたときは温暖で湿潤な気候であったことが示唆されていた。しかし、火星の計算モデルからは、その時期の気候は寒冷で、地表は氷で覆われていたことが示唆されていた。
今回、Anna Grau Galofreたちの研究チームは、火星の谷の地形を分析して、それらが形成された可能性のあるさまざまな過程を特定し、分析した谷の大部分が氷床の下にある河川や流路の水により浸食されてできた地形とよく似ていることを見いだした。Galofreたちは、火星で氷の下で形成されたと考えられる谷を、地球のものと比較して、地形的に類似していることを発見した。
Galofreたちは、今回の知見は、初期の火星の気候は、これまでの研究で示されていたように温暖で湿潤なものではなく、主に寒冷・極寒だったとする理論が裏付けているものであると結論付けている。
doi:10.1038/s41561-020-0618-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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