生態学:ハチの病気の広がりは多様性によって抑制される
Nature Ecology & Evolution
2020年7月21日
ハチの種数と花の数が多いと送粉者群集内の寄生虫の蔓延が抑制されることを明らかにした論文が、今週、Nature Ecology & Evolution に掲載される。
ハチなどの昆虫群は送粉サービスを行っているため、その減少は強く懸念されている。花の数を増やせばハチの健康状態は改善されると考えられるが、花はハチの病気の伝播拠点として働く場合もある。しかし、特にハチと花の群集全体において、感染リスクが経時的にどう変化するのかは、ほとんど分かっていない。
今回、Peter Graystockたちの研究チームは、米国ニューヨーク州北部の休耕地3か所で、1回の生育期の全体を通じて110種のハチと89種の花の多様性および個体数を調べ、ハチに多い5種類の寄生虫の存在状況を分子スクリーニングで評価した。5000点を超える花とハチをスクリーニングした結果、ハチ種の42%と花種の70%が、少なくとも1種の寄生虫を保有していたことが明らかになった。また、ハチの寄生虫保有率は、ハチの多様性が最も高く、ミツバチやマルハナバチなどの一般的な社会性種が比較的少ない生育期前半に最も低かった。逆に、花の寄生虫保有率は、花の数が比較的多い生育期後半に最も低かった。
こうした知見は、自然群集内のハチ種の多様性を高め、花の数を増やせば、病気の伝播する勢いが弱まって、送粉者の健康状態が改善される可能性があることを示唆している。
doi:10.1038/s41559-020-1247-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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