Research Press Release

古生物学:古代の足跡化石は、2足歩行の巨大翼竜ではなく2本足のワニのものかもしれない

Scientific Reports

2020年6月12日

白亜紀前期の地層であるチンジュ層(韓国)から発見された保存状態の良い大きな足跡の化石が、現生ワニ類の祖先のものだったことを報告する論文が、今週、Scientific Reports に掲載される。これまでに発見された足跡化石は2足歩行をしていた巨大翼竜類のものだと考えられていたが、そうではなく、古代に生息していたワニ類の近縁種だった可能性があることが今回の研究で示唆されている。

Kyung Soo Kim、Martin G. Lockleyたちの研究チームは、韓国・サチョン市近郊のチャヘリ遺跡で、発掘作業中に複数の行跡(連続した足跡)の化石を発見した。この行跡化石は、現代のクロコダイル、食魚性クロコダイル、アリゲーターの祖先であるワニ類の新種(著者たちがBatrachopus grandisと命名)のものとされる。この行跡化石は、以前に発見されたbatrachopodidの行跡化石の2倍以上の大きさで、長さが18~24センチメートルの足跡が含まれており、体長が最大3メートルだったと考えられる。この行跡化石は、幅が狭くて、後肢の足跡しかなく、踵からつま先までの明確な足跡があり、皮膚の痕跡が残っている部分もあった。これが4本足のワニ類の行跡であることを示唆する決定的な証拠は、前肢跡が後肢によって消されてしまったか、あるいは保存状態が劣悪だったために見つかっておらず、このことからB. grandisが2足歩行をしていたと考えられる。この歩調は、過去に発見されたワニ類の行跡化石標本には見られなかった。

チャヘリ遺跡より後世の遺跡でも行跡化石が発見されており、2足歩行のできる巨大翼竜類が地上で翼をかばいながら歩行した跡だと考えられていたが、今回の研究で得られた知見からは、むしろワニ類の行跡化石だった可能性が示唆されている。今回の結果は、翼竜類は四肢を全て用いて歩行していたという痕跡化石の研究における一般的な見解を裏付けており、今回発見された化石と同時代の形態的に類似した化石標本を再調査する必要性を明確に示している。

doi:10.1038/s41598-020-66008-7

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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