天文学:銀河同士の接近が星の誕生を引き起こす
Nature Astronomy
2020年5月26日
近傍のいて座矮小銀河と頻繁に接近した結果、天の川銀河(銀河系)で新しい星が誕生した可能性のあることを示した論文が、Nature Astronomy で発表される。近傍の星の年齢の解析から、星は、いて座矮小銀河との少なくとも3回の独立した接近の直後に起こったバーストによって形成されたことが示された。
いて座矮小銀河は、天の川銀河の低質量の伴銀河であり、時折、天の川銀河のすぐ近くを通過して、星の分布に波打ち構造を生じさせるなどの重力効果を引き起こすことがある。
今回、Tomás Ruiz-Laraたちは、太陽周辺の半径6500光年のバブルにおける数千万個の星の年齢の解析から、星形成事象の歴史をたどった。その結果、天の川銀河は、その寿命の後半に一定の割合で星を生み出してきたが、星形成活動の高まるバーストが3回あった(59億年前、19億年前、および10億年前)ことが明らかになった。著者たちは、いて座矮小銀河の軌道運動のシミュレーションとこれらのバーストのタイミングを比較して、バーストが2つの銀河の接近と一致していることを明らかにした。銀河同士は重力的に相互作用することが知られており、これらのバーストは、いて座矮小銀河が天の川銀河の星形成に影響を及ぼすことを示していると、著者たちは考えている。いて座矮小銀河における星の解析は、この銀河の星形成事象が天の川銀河の星形成とおおよそ同時期に起こることを示唆している。
doi:10.1038/s41550-020-1097-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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