進化:ヨーロッパ最古の現生人類の証拠
Nature Ecology & Evolution
2020年5月12日
ヨーロッパ南東部の洞窟から初期の現生人類の骨および関連の人工遺物を発見し、その年代測定を行ったことを報告する2編の論文が、今週、Nature とNature Ecology & Evolution に掲載される。今回発見された化石のヒト族は、後期旧石器時代のホモ・サピエンス(Homo sapiens)の既知最古の例となる。
ホモ・サピエンスは約4万5000年前までにヨーロッパに入り、間もなくネアンデルタール人と入れ替わった。この集団の入れ替わりの時代は、中期~後期旧石器時代の移行期として知られている。この移行期の事象の正確な時期に関しては、直接的な年代測定が行われた化石遺物がないために、激しい議論が行われている。
今回、Jean-Jacques HublinたちはNature に掲載される論文で、ブルガリアのバチョキロ洞窟で発掘されたヒト族の骨と人工遺物について記述している。Hublinたちが発見したのは、ホモ・サピエンスのものと推定される歯1点と、古代のタンパク質およびDNAの内容からヒトのものと特定した骨遺物4点である。また、Helen FewlassたちはNature Ecology & Evolution に掲載される論文で、放射性炭素年代測定によって、この場所の遺跡の年代範囲が4万6940~4万3650年前であると報告している。これらの骨から抽出したDNAの解析から、4万4830~4万2616年前という年代が推定され、放射性炭素年代の測定結果が支持された。
今回の発掘では、クマの歯製のペンダントなど、ネアンデルタール人の活動と関連付けられている後代の遺跡で発見されたものと類似した、数多くの装飾品も発見された。こうした知見を総合すると、現生人類は4万5000年前以前に中緯度ユーラシアへ進出してネアンデルタール人と同じ時代を過ごし、その行動に影響を与えた末に、ネアンデルタール人に取って代わったことが示された。
doi:10.1038/s41559-020-1136-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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