生態学:侵入種のクシクラゲは被食者を食べ切った後は自種の幼生を食べて生き残る
Communications Biology
2020年5月8日
バルト海西部に生息する侵入種のクシクラゲ の一種Mnemiopsis leidyiは、食物が不足すると、自種の幼生を食べることを明らかにした論文が、今週、Communications Biology に掲載される。この新知見は、M. leidyiが繁栄している理由を説明でき、この生物種の拡散を制御するための保全戦略の設計に役立つと考えられる。
M. leidyiは、海洋捕食者で、西大西洋の在来種だが、1980年代にユーラシア海域に導入されて以降、同海域に広範囲に分布するようになった。M. leidyiは、魚類やその幼生と競合し、重要なプランクトンの食物網に連鎖的な影響を及ぼし、商業漁業を混乱させている。M. leidyiの個体群は、急激な増減を繰り返す動態を示すが、長期間にわたって被食者(餌生物)の不足状態が続くユーラシア海域北部において急速な個体群成長をどのように維持しているのかは分かっていない。
今回、Jamileh Javidpourたちの研究チームは、ドイツ東部のキール峡湾でM. leidyiを採集し、観察した。その結果、M. leidyiの主たる被食者であるカイアシ類の存在量が急減すると、その直後にM. leidyiの幼生の存在量が急減するが、成体の存在量は急減しないことが明らかになった。なぜそうなったのかを解明するため、Javidpourたちは、実験室内でM. leidyiを調べて、M. leidyiは 被食者であるカイアシ類がいなくなると、自種の幼生を食べることを発見した。Javidpourたちは、M. leidyiが夏の終わりに大増殖し 、被食者をほぼ全滅させて、他の捕食者との競争を制してから、食物が不足する期間に備えて栄養素を蓄えておくために共食いに移行すると主張している。
今回の研究は、多産な侵入種であるM. leidyiを制御するための効果的な戦略を考案する上で役立つと同時に、動物界における共食いの進化的起源に関する手掛かりをもたらしている。
doi:10.1038/s42003-020-0940-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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