医学研究:心臓の血流を追跡するAI
Nature Machine Intelligence
2020年4月14日
心臓血管の血流スキャンを高速化できる人工知能(AI)システムについて報告した論文が、Nature Machine Intelligence に掲載される。この深層学習モデルは、患者がまだMRIスキャナー内にいる間に臨床医がリアルタイムで血流を見られるようにすることで、診断ワークフローを改善する可能性がある。
4D MRIスキャンは、心臓血管の血流を経時的に再構成するために使用することができ、各種の心臓血管疾患の診断に重要である。しかし、これらのスキャンでは処理に20分ほど時間がかかることが多く、1回の検査の間にさらなる画像評価に関する決定をすることができない。こうしたスキャンを高速化することができれば患者がスキャナー内にいる間にリアルタイムで評価を行えるようになり、臨床医の手間を省き、患者の不快感を減らせる可能性がある。
今回、Valery Vishnevskiyたちは、心臓の4D血流をものの数秒で再構成する深層学習AIモデルを開発した。著者らは11のスキャン例でニューラルネットワークを訓練し、このネットワークが健康な患者と異常な血流を示す患者の大動脈の血流を従来のアプローチと同等の精度で正確に再構成できることを見いだした。このAIシステムは20秒前後でスキャンを再構成することができ、これは最新の従来型手法の30倍の速さで、以前の深層学習アプローチの4.2倍の速さである。
doi:10.1038/s42256-020-0165-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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