機械学習:匂いを嗅ぐアルゴリズム
Nature Machine Intelligence
2020年3月17日
匂いの生物学的知覚を模倣した設計のニューラルアルゴリズムに関する論文が、今回、Nature Machine Intelligence に報告される。得られた知見は、人工の鼻を訓練して未知の背景臭の存在下でも特定の匂いを認識できるようにする将来の応用の基礎となる可能性がある。
ニューロモーフィックチップは、脳に着想を得た計算機構を用いるチップで、人工のニューロンとシナプスからなるネットワークである。しかし、この機構を現実世界の実用的な問題に用いる方法は明らかでない。主な理由は、生物学的神経回路のレベルで実装されているアルゴリズムに関する理解が十分でないからである。
Nabil ImamとThomas Clelandは今回の論文で、哺乳類の嗅覚器系のアーキテクチャーに基づく匂いサンプルの学習と同定のニューラルアルゴリズムについて報告する。著者らはこのニューラルアルゴリズムをニューロモーフィックシステムに実装し、トルエン、アンモニア、アセトン、一酸化炭素、メタンなどの匂いについて訓練し、風洞中のセンサーからのデータを使ってテストを行った。
実験の結果、哺乳類の嗅覚の理解と人工化学感覚系の性能の向上に役立つ計算論的特徴が明らかになった。今回の知見は、こうした生物学的神経システムの適用が、現在の人工知能の傾向を超える新しいアルゴリズムを開発するための強力な手法となる可能性も示唆している。
doi:10.1038/s42256-020-0159-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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