代謝:ヒトの内臓の細菌を解析
Nature Metabolism
2020年3月10日
ヒトの内臓に細菌DNAがどのように分布するかを詳細に解析した報告が、Nature Metabolism に掲載される。
細菌は、体表の至る所や腸管の中に生息している。内臓は普通は無菌だが、肥満などの病気では、細菌の断片が腸管から血中に移動し、炎症応答を引き起こすことがある。しかし、このような細菌断片がどこから来るのか、またこれら断片が組織にどのように分布するのかの詳細は、組織の清浄サンプルを得るのが難しいこともあって、これまで解明されていなかった。
今回Andre Maretteたちは、減量手術を受けた患者40人から血液、肝臓、3種類の脂肪組織(皮下脂肪、腸間膜脂肪、大網脂肪)のサンプルを集めて、微生物DNAを解析した。すると、各組織サンプルにみられる細菌の種類や細菌DNAの量に、特異的な違いがあることが明らかになった。また、2型糖尿病患者20人の脂肪組織には、特有の微生物DNAシグネチャーがあることが分かった。さらに、組織サンプル中から、腸内細菌由来のDNAだけでなく、土壌中、水中に広く見られる細菌由来のDNAも検出された。これらの知見は、ヒトの内臓が外来の遺伝物質に日常的に曝されていることを示唆している。
この研究により、腸以外のヒトの体内に、細菌や細菌DNAがどのように分布しているかが明らかになった。サンプル中の細菌が生きているのか、つまり内部組織微生物相を形成できるのか、あるいは組織に含まれるのは細菌DNAの断片なのかを確かめるには、さらなる研究が必要である。微生物DNAがどのようにして組織に到達したのか、すなわち腸外輸送が関わっているのか、あるいは免疫細胞の助けによるのかを明確にするには、今後の研究が役立つだろう。
doi:10.1038/s42255-020-0178-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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