【健康】毎日の喫煙と飲酒が脳の高齢化につながっているかもしれない
Scientific Reports
2020年1月31日
飲酒と喫煙を毎日行う者は、それよりも飲酒と喫煙の頻度が低い者と比べて、相対脳年齢がやや高いという研究結果を報告する論文が掲載される。
以前の研究で、特定の生活習慣(過度の喫煙やアルコール摂取など)が特定の脳領域に悪影響を及ぼすことが示されているが、特に脳全体を考えた場合に、喫煙とアルコール摂取が脳年齢とどのように関連しているのかは明らかでない。
今回、Arthur W. Togaたちの研究チームは、機械学習のいくつかの手法とMRIを用いて、英国バイオバンクにデータ登録されている45~81歳の被験者(合計1万7308人)の相対脳年齢を決定した。相対脳年齢は、MRI測定に基づく脳年齢を同世代の平均脳年齢に照らして算定される。
Togaたちは、喫煙習慣に関する情報が収集された1万1651人において、1日の大半または1日中喫煙していた者の相対脳年齢が、喫煙頻度が低い者や禁煙している者より高かったことを見いだした。そして、喫煙量が1パック・年増えると、相対脳年齢が0.03年上昇していた。1パック・年は、1年を通じて平均1日1箱のタバコを吸うことと定義される。また、飲酒行動に関する情報が収集された11600人において、ほぼ毎日飲酒していた者の相対脳年齢がそれよりも飲酒頻度が低い者又は全く飲酒しない者の相対脳年齢より高かった。また、1日当たりのアルコール摂取量が1グラム増えると、相対脳年齢が0.02年高くなった。以上の知見は、喫煙と飲酒が脳年齢に及ぼす有害な影響が、主に喫煙と飲酒の頻度が高い者に生じており、脳年齢がわずかに上昇することを示唆している。
Togaたちは、喫煙とアルコール摂取以外にも、さまざまな環境因子と遺伝因子が脳年齢に関連している可能性がある点にも注意を要するとしている。こうした関連の解明をさらに進めるには、より大きなサンプルを用いた研究が必要とされる。
doi:10.1038/s41598-019-56089-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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