がん:乳がんの早期発見を推進できる新しい人工知能モデル
Nature
2020年1月2日
乳がん検出能力が放射線科の専門医よりも優れた人工知能(AI)システムについて報告する論文が掲載される。このディープラーニング(深層学習型)モデルは、乳がん検診の精度と効率を向上させるための前向き臨床試験に寄与する可能性がある。
多くの先進国では、乳がんをできるだけ早期に発見するため、マンモグラフィーによる大規模な乳がん検診プログラムが実施されている。マンモグラフィーは広く採用されているが、マンモグラフィー画像の解釈は、今でも難度が高い。専門医によるがんの検出精度には大きなばらつきがあり、最高の臨床医であっても検出実績には改善の余地が見られる。また、本当は陽性でないのに陽性と判定されてしまうと(偽陽性の場合)、患者が不必要な不安を抱えたり、本来は必要のない経過観察の予約をしたり、侵襲的な診断手順を実行したりといったことにつながる。
今回、Shravya Shettyたちの研究グループは、乳房X線像のスクリーニングによって乳がんを検出できるディープラーニング(深層学習型)AIモデルを開発し、英国(2万5856例)と米国(3097例)の2種類の大規模な乳房X線像データセットを用いて、このAIシステムを評価した。Shettyたちは、このAIモデルを用いることで、偽陽性の絶対的減少(米国5.7%減、英国1.2%減)と偽陰性の絶対的減少(米国9.4%減、英国2.7%減)が起こることを明らかにした。これとは別に独立して実施された研究では、このAIシステムは6人の放射線科医全員の検出成績を上回った。また、このAIシステムを二重読影過程(英国では乳房X線像のスクリーニング過程で2人の放射線科医がそれぞれ読影を行う)で使用すると、第2の読影者の作業負荷が88%減る可能性も明らかになった。
doi:10.1038/s41586-019-1799-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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