【生態学】絶滅したシカ似の種が「再発見」された
Nature Ecology & Evolution
2019年11月12日
科学的には絶滅したものと考えられていた、シカに似た有蹄類種がベトナムにおいて野生で生きているのが発見されたことを報告する論文が掲載される。これまで、マメジカの1種Tragulus versicolorのものとして知られる最後の記録は、1990年に狩猟で殺された標本であったが、このほど、その種の生きている姿が30年ぶりに撮影された。
ベトナムとラオスの大アンナマイトエコリージョン(Greater Annamites Ecoregion)は、世界有数の生態学的多様性を有する地域である。1910年、silver-backed chevrotainと呼ばれるマメジカの一種T. versicolorが、ベトナム・ニャチャン市近郊で得られた標本に基づいて初めて記載された。しかし、1990年以降は科学的に確かな目撃例が確認されておらず、この地域で盛んに行われているわな猟がこの種を絶滅の瀬戸際に追い込んだのではないかと懸念されていた。
An Nguyenたちは、ベトナムの3つの省の住民から聞き取りを行い、T. versicolorを捜し出す取り組みの中で、マメジカの目撃例がその種の記載と一致することを明らかにした。そして、この地元の情報を利用して、動きに反応するカメラトラップを近隣の森林生息地に30台以上設置した。
6か月にわたるカメラトラップ調査の結果、T. versicolorは200回以上検知されていたことが確認された。ただし、写っている個体が何頭なのかは不明である。この種は科学的には「再発見」されたものと考えることができるが、現地の調査から、地元住民の間では絶滅したとは考えられていなかったことが指摘された、というのが研究チームの結論である。
個体群のサイズを明らかにし、この種の保全に資する取り組みの強化を図るためには、さらに徹底的な調査と地元社会の関与が必要なのではないか、と研究チームは示唆している。
doi:10.1038/s41559-019-1027-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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