【感染症】気候変動によってエボラウイルス疾患のリスクが高まる可能性
Nature Communications
2019年10月16日
このほど行われたモデリング研究で、エボラウイルス疾患の流行が、地球規模で起こり得るさまざまな変化のシナリオにおいて増加すると予測されたことを報告する論文が掲載される。
動物が発症し、ヒトに感染する人畜共通感染症は、数多くの要因(病原体保有宿主の分布と健康状態、病原体保有宿主とヒトの接触率、疾患介入策など)から影響を受ける。
今回、David Redding、Kate Jonesたちの研究グループは、これらの要因を全て考慮に入れて、エボラウイルス疾患(EVD)のspillover現象に関する多面的な数理モデルを作成した。このモデルを適用したところ、過去にアフリカでEVDが流行した地域が正確に予測された。Reddingたちは、このモデルによって、気候変動、人口増加と医療のやり方の変化が関係する複数のシナリオにおいて将来的にEVDが流行するリスクのある地域と流行可能性を予測することができた。
Reddingたちはまた、全ての気候温暖化シナリオにおいて、EVDが流行する可能性のある地域が増え、特にこれまでEVDが流行していない西アフリカと中央アフリカの地域で増加することを見いだしている。温暖化が進み、社会・経済的発展の遅れているシナリオにおいては、spillover現象によるEVDの流行可能性が1.6倍(訂正前:4倍)になっていた。
これまでのEVDの流行確率モデルでは、病原体保有宿主の生態学的特性と気候温暖化の影響可能性が考慮されていなかった。今回の研究の新しいモデルに基づく知見は、将来的な流行を防ぐため、EVDに対する監視を優先的に実施すべき地域を示唆している可能性があるとReddingたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41467-019-12499-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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